管楽器に限らずだが、楽器の演奏に適した気温は、約24度、と聞いた事があるが、凡そのところは、その近辺ではないかと思われる、要するに、普通快適に生活できる気温、と云えるだろう。 何度、と数字ではっきり決めるのは、難しいかも知れないが、例えば、上着を着た状態で暑く感じない、上着を脱いだ状態でも、寒くない程度、と云うのが分かり易いのではないだろうか。 寒いところでも、音が出ない訳ではないが、楽器の歌口に近い部分と、遠い部分で、温度差が出来てしまい、音によってピッチが変わってくる。 木管楽器だと、温度差がなるべく出ない様に、歌口の反対の方からも息を吹き込んだりする事で、多少はましに成るのだが、吹いていても端の方から冷えてくる様な場所では、それもあまり効果がない。 金管楽器だと、この反対側から吹き込み、と云うワザは使えないだろう。 ある程度は、管の抜き差しや吹き方でピッチのコントロールは出来るのだが、それにも限度があり、やはり20度以下に成ると、難しく成ってくる。 フルートの場合は頭部管を2、3ミリ抜いた状態がベストなのだが、これを抜いたり差したりして調整する。 クラリネットも同様だが、クラリネットの場合は、マウスピースと本管(?)の間に「樽」と呼ばれる部分があって、これを取り替えたりもする様だ。 オーボエやファゴットの場合は、リードの抜き差しで調整する。 クラリネット、オーボエ、ファゴットの場合は、途中の継ぎ目も、抜き差しが出来るので、そこで微調性をするケースもあるかも知れない。 いずれにしても管を抜き差しすると云う事は、ギターのフレットをそのままにして弦の長さを変えるようなものだから、当然バランスが狂ってくるわけで、限度が有る。 金管楽器の場合は、管の途中に、調整用のスライドが付いている。 トランペットやホルンの様にピストンやバルブが付いている楽器では、ピストン毎にスライドが有るので、比較的バランス良く調整出来るのかも知れない。
穴が塞がるまでは行かなくても、タンポ(穴に直接接触する少し柔らかい部分)に水滴が付いたりすると、狂いの原因にもなるので、やはり要注意だ。 ずっと吹き続けていれば、楽器の温度も維持出来るのだが、休みが長かったりすると、次に吹く時は、少し前から息を通して、楽器を暖めておく必要がある。 スタジオの様に、急に持ち替えて吹く事が多いと、かなり状況は厳しくなってくる。 逆に暑すぎると、管を抜くしか対応のしようがなく、これも、抜きすぎると、音程のバランスが狂ってしまうので、限度がある。30度くらいになると、かなり無理が出てくるだろう。 こう考えてくると、管楽器に適した気温は、仮に24度が適温とすると、その上下、せいぜい4、5度くらいの範囲ではないかと云う事になる。 ただ、こう云う事を云っているのは、贅沢だ、と云われるケースもあるのかも知れない。 野外で演奏するブラスバンドなんかは、炎熱の競技場や、零度を切る様な、冬の野外でも演奏する場合がある。 ピッチの面など、ある程度目をつぶる事は、致し方ないとは思うが、そんな悪条件でも、かなりのレベルの演奏を聴いた事もあるので、やはりそれなりの対応の仕方もあるのだろう。 氷点下のような状況だと、金管楽器のマウスピースが、唇に凍り付いてしまう、と云う様な話も、聞いた事があるので、やはり半端な事ではないと思う。 |